アトピーでお悩みの方へ

私の経験談とステロイド薬についてのコラムです。 アトピーでない方は関心が無いかもしれませんが、近年非常に増えている疾患です。是非ご一読ください。

アトピーとは、「奇妙な」という意味のギリシャ語から来た言葉です。その名の通り、アトピー性皮膚炎はハッキリとした治療法が確立されておらず、今なお多くの患者が苦しんでいる皮膚疾患です。ですから、「これでアトピーが治る!」というものはまず疑ってかからねばなりません。そんなものは存在しないからです。一口にアトピーと言っても、その原因が千差万別で、だからこそ治療法も千差万別なのだと思います。

専門書によれば、アトピーの治療は、「悪化因子の除去」、「スキンケア」、「薬物治療」が3本柱になっています。これを同時に実行せねばなりません。それぞれの取り組むべき内容が個別に違うので、その人に合った治療法が必要になります。私もずいぶんたくさんの治療を試しましたが、効果があったもの、なかったもの様々でした。最も顕著に効果が出たのが合成洗剤をやめて石けんに切り替えることでした。ところが、全ての方に当てはまるかというと、そうとも限りません。アトピーとうまくつき合うには、その人ごとの治療の3本柱に気長に根気よく取り組んで緩やかな改善を目指すのが良いと思います。ここでは、私の経験を紹介させて頂きます。アトピーで苦しむ方の手助けになれば幸いです。

私がアトピー性皮膚炎になったのは、中学2年生の頃でした。カミソリに負けて肌荒れが起こったのがきっかけだったと思うのですが、それがみるみるうちに赤く広がって、かゆくてたまりませんでした。それから皮膚科に通ってはステロイド薬を処方してもらう、という日々が始まりました。大人になってもアトピーは治らず、ステロイド薬のレベルはどんどん上がっていきました。社会人になった頃から症状は一気に悪化していきました。気が付けば全身が真っ赤になるくらい酷くなっていたのです。この時期は四六時中かゆくてたまりませんでした。とにかく我慢できるレベルではないのです。毎朝、起きてから鏡を見るのがイヤでした。たとえ起きている時は必死でかゆみを我慢したとしても、寝ている間にかきむしってしまうのです。真っ赤に腫れ上がった顔を見てはため息をついていました。真剣にベッドに自分の腕をくくりつけて寝ようかと思ったこともあります。アトピーで苦しんでいる人というのは、外出するのも嫌になり、ついには社会生活をおくることが困難になります。自分もそこまで行くのではないか、という恐怖とも戦わねばなりませんでした。

今にして思えば、この時期は治療の3本柱の中の「薬物治療」しか行っていませんでした。はじめに書いたように、アトピーの治療は「悪化因子の除去」、「スキンケア」、「薬物治療」の3本柱を同時に実行するのが効果的です。私は、「悪化因子の除去」と「スキンケア」が出来ておらず、「薬物治療」だけに頼っていました。結果、薬物のレベルがどんどん上がり、ステロイド依存症のような状態に陥っていました。

22歳の夏、私は地元の生活協同組合(生協)の職員採用試験に合格し、商品開発とカタログ作成の仕事に携わることになりました。その生協では、「合成洗剤をやめて身体にやさしい石けんを使おう」という運動をしていました。私は、合成洗剤という言葉すら知りませんでした。同時に、大学で化学を専攻していたにもかかわらず、毎日肌に直接触れる洗剤の原料や製法について何ひとつ疑問を持たずに過ごしていたことに愕然としました。そして合成洗剤と石けんについて勉強を始めました。洗剤とは一体なんなのか、何を原料にどのように製造されるのか。知れば知るほど、石けんの方が安全であることがわかりました。

合成洗剤のボディーソープやシャンプーを石けんに切り替えてからしばらくして、ステロイド薬を使わなくても大丈夫な日が増えはじめました。10年間手放せなかった薬が、1年くらいかけて少しずつ弱いものになっていき、さらに頻度も少なくなっていったのです。あとから分かったことがですが、合成洗剤によって肌のバリア機能が失われ、私の持っているアレルゲンであるハウスダスト(ダニ)が侵入しやすい環境にさらされていたのです。これが、石けんによる優しいスキンケアによって肌のバリアが正常な状態に戻り、「悪化因子の除去」が出来たのです。完全に治ったというよりは、うまくつきあえるレベルに落ちついたという感じです。これは本当に本当に嬉しかったです。そしてとうとう、まったくステロイドを使うことなく日常生活を送ることができるようになりました。結果的に、私の「悪化因子除去」が「合成洗剤を使用しないこと」であり、「スキンケア」が「石けんに切り替えること」で実現していたのでした。

結局、この生協で8年間お世話になり、多くの組合員に合成洗剤と石けんについてのお話をさせて頂きました。この期間は、自分が石けん専門店を立ち上げるうえで非常に有意義な期間となったことは言うまでもありません。今でもストレスを感じたり、ホコリっぽい部屋に入ったり、タバコの煙を浴びるなどの悪化因子があればかゆみは出ます。しかし、我慢できないかゆみではありません。私にとっての最大のアトピーの悪化因子が、合成洗剤だったのだと思います。その証拠に、旅行先で石けんが無い時などに仕方なく合成洗剤を使ったりすると、すぐにかゆくなってしまいます。今では旅行には必ず石けんを持って行くようにしています。

ステロイド薬が悪いとは言いません。それがどのようなものか理解したうえで、状況に合わせて使うのであれば大変効果的なものです。しかし、アトピーの治療に於いては薬単独では根本治療になり得ません。「悪化因子の除去」、「スキンケア」、「薬物治療」の3本柱の1本であって、他の2本と同時に実践せねば逆に事態を悪化させてしまう怖い薬と言えると思います。

またはじめに書いた通り、アトピーにはこれという治療法は無く、原因も治療法も千差万別です。ですから、全ての方に私のケースが当てはまるとは限りません。小さい頃にアトピーだったお子さまが、第二成長期に突然改善するというケースも多いのです。

ですが、この体験を参考にして「悪化因子」を突き止めたり、「スキンケア」をしっかり実践することでうまくつきあえるようになる可能性は十分あります。そして合成洗剤をやめて石けんに切り替えることは、その有効なひとつの手段として試す価値が十分にあることです。

最後に、石けん以外でアトピー対策に効果的ではないかと(私の経験から)思われるものを紹介します。もしも実践されていないことがありましたら、是非お試しください。効果はすぐには現れないかもしれませんが、悪化しないのであれば続けてみてください。

●食品添加物を、なるべく避けるようにする(可能な限り自分で調理しましょう。これについては、これからもフェイスブックなどで書いていきたいと考えています。)
●睡眠時間を十分に取る(免疫力の低下は、あらゆる病気の原因となります。)
●アルコールを控える
●タバコを避ける(家族の協力も不可欠です。)
●ストレスをうまく逃がす(イライラしないように、心にゆとりを持ってください。)
●かゆみを我慢する(がんばれば、出来るようになります。身近な方が指摘してあげるのも良いでしょう。)
●マーガリンをやめる(トランス脂肪酸を避ける。)


「悪化因子」を除去したら、石けんで「スキンケア」をしてみてください。そして調子が良ければ、ステロイド薬を使用している方はなるべく使用量やレベルを落としてみましょう。あせらず、ゆっくりとした改善を目指してください。

このコラムは、私個人の経験とアドバイスを紹介しているもので、アトピーの改善を保証するものではありません。

  2010/12/20 無添加手作り石けん専門店オラン・ク・オラン店主 橋本健一


アトピー対策にオラン・ク・オランの石けんを使用される場合は、どの程度かにもよりますがジャワティーとカユプティをお勧めします。カユプティはユーカリオイルを配合しており、殺菌と傷の治りを助ける効果があります。すでに掻き傷が酷い場合はこちらを先に使ってください。次にジャワティーですが、こちらは傷を治す効果ではなく保湿が優れており、刺激が最も少ないタイプとなっております。幾分赤みが引けば、こちらをお勧めします。人によって症状も合う・合わないがあったりもしますので、この2種類を使い比べて頂くのが良いかと思います。

初めて使うとピリピリしたような感じを受けるかもしれませんが、これは石けんが弱アルカリ性だからです。肌に炎症があるなど弱っている状態だと、弱いアルカリ性の性質にさえ敏感に刺激を感じてピリピリしたり、刺激を強く感じる場合があります。温泉もアルカリ性のものがたくさんありますが、温泉でピリっとした経験はありませんでしょうか。しばらく石けんを続けていると、健康な肌になってピリピリが無くなると思います。アトピーは大変苦しい症状かと思いますが、決してあきらめずに原因かと思われる物を根気よく除去してみてください。時には薬を使うのも良いと思います。(使い続けることは問題ですが)気長に、正しいスキンケアを続ければ少しずつでも改善に向かうと思います。できるだけストレスを溜めずに、健康的な生活を送ってください。また、何かわからないことは気になることがありましたら、いつでもご質問ください。私の知識の範囲でお応えさせて頂きます。